イマージョン教育という言葉を聞いたことがありますか?
イマージョン教育は「バイリンガル育成に効果的」という研究結果があるプログラムです。
- イマージョン教育をくわしく知りたい
- イマージョン教育の注意点って?
- どこでイマージョン教育を受けられる?
- 子供をバイリンガルに育てたい
そんな疑問をお持ちのあなたのために、今回はそれぞれの種類やメリット・デメリット、問題点と学校一覧を紹介していきます。
この記事を読み終わるころには、イマージョン教育について正しく知り、バイリンガル教育の幅が広がるはずです。
イマージョン教育とは?
イマージョン教育とは、外国語で他の教科を学習する「外国語指導法」の一つです。
1965年カナダで始まり、アメリカそして世界各国へ広がった学習方法。
日本では1992年に加藤学園暁秀初等学校が初めて導入。
現在では2校のみですが、公立小学校で導入しているところもあります。(2021年現在)
たとえば、加藤学園暁秀初等学校1年生では国語・音楽・道徳を日本語で、体育・図工・算数・英語を英語で学びます。
英語の使用割合は60%になります。
加藤学園暁秀初等学校(1年生) | |
英語を使って授業 | 英語・算数・体育・図工 |
日本語を使って授業 | 国語・音楽・道徳 |
イマージョン教育は本格的なバイリンガル教育ですが、決して日本語の習得を置き去りにするアプローチではありません。
英語に触れる時間を長くして、英語も日本語も一緒に伸ばしていきます。
また、学習環境と人材(教師)がそろっていないと導入できないことも特徴の一つ。
カナダやアメリカのように、広く普及するのは難しいかもしれませんが、高い効果が認められるプログラムなのです。
イマージョンの定義
日本では「幼稚園で歌の時間だけ英語を使用する」というケースでもイマージョンと呼ぶことがあります。
しかし、それは本来「イマージョン」とは呼ばないのです。
イマージョンとは、長期的に指導教科の50%以上を英語で学習することをいいます。
※本来、イマージョン教育は外国語で他教科を学ぶことをいいますが、この記事では「英語イマージョン教育」について説明します。
イマージョン教育は3+4種類に分けられる
イマージョン教育は、いくつかの種類に分けることができます。
代表的な7種類をひとつずつ詳しくみていきましょう。
開始時期で分ける3種類
イマージョン教育を始める時期によって、3種類に分けることができます。
開始時期(年齢)で分類する | |
早期イマージョン | 幼稚園年中~小学1年生(5・6歳) |
中期イマージョン | 小学3~4年生(9・10歳) |
後期イマージョン | 小学5年生~中学2年生(11~14歳) |
日本でのイマージョン教育は現在、小学校入学と同時にスタートするケースが多いです。
ほとんどの英語教育において言えますが、開始時期は早い方が効果をより感じることができます。
英語を使用する割合で分ける4種類
英語をツールとして使用する割合によって、4つの種類に分けることができます。
どの種類で学ぶかは学校により違いますが、日本の学校では部分イマージョンを採用しているところが多くあります。
英語と日本語の割合で分類する | |
完全イマージョン | すべての教科をほぼ100%英語で学習する |
部分イマージョン | 一部の教科を英語で学習する |
二言語同時学習イマージョン | 英語・日本語を組み合わせて学習する |
双方向イマージョン | 英語・日本語それぞれを母語とする生徒が混在したクラスで学習する |
完全イマージョン(total immersion)
一方向性イマージョンの1つで、すべての教科を英語100%の割合で学習します。
すべての科目が英語なので、学校生活の90%以上が英語を使用した状態です。
日本語の読み書きは、ある程度の学習が進んでから(おもに2・3年後に)始めます。
そして、学年が上がるごとに日本語の割合を増やし、最終的には英語と日本語50%ずつくらいの割合になります。
社会で使える、実用的で自然な英語のマスターを目指すプログラムです。
部分イマージョン(partial immersion)
一方向性イマージョンの1つで、一部の教科だけ(約半分の教科)を英語で学習。
英語で学習する割合は50%程度で、教科ごとに使用言語が分かれています。
また、卒業まで一貫して50%程度の割合で英語を使用します。
二言語同時学習イマージョン(dual language)
英語と日本語を組み合わせて行うプログラム。
日本語の読み書きを最初に開始する場合と、英語・日本語の読み書きを同時に開始する場合があります。
おもな目的は、どちらもイマージョン教育を受けていない同年齢の子供と、同じレベルの読み書きができるようになることです。
また、言語以外の教科でもその学年に相応したレベルの学力が得られます。
双方向イマージョン(two way immersion)
英語と日本語、それぞれを母語とする生徒が混在するクラスで授業を行います。
生徒の割合も使用言語も、英語と日本語50%ずつです。
苦手な言語を学びながら、得意な言語ではクラスをリード。
クラスの生徒たちが、協力しあいながら学習してきます。
イマージョン教育の利点
バイリンガルを目指す子供がイマージョン教育を受ける利点は、主に以下の3つです。
- 自然な英語を習得できる
- 多文化理解が深まる
- 思考力・理解力が高まる
理由も含めて、詳しく解説していきます。
勉強している意識がなくても自然な英語を習得できる
自然で実践的な英語を習得できることは、最大の利点ともいえます。
「英語を勉強している」という意識がなくても、他の教科を通してネイティブな英語が身につきます。
また、イマージョン教育を受けなかった場合に比べて、英語に触れる時間に5倍以上もの差がつきます。(早期イマージョンの場合)
イマージョン(immersion)は、英語で「浸すこと・浸水・熱中・没頭」などの意味を持ちますが、まさしく「浸す」ことでより高い英語力が身につくのです。
グローバルな時代に合った多文化理解が深まる
多文化理解・多様性への理解が叫ばれる昨今。
イマージョン教育を受け、母国文化とは異なった文化に触れることで、多文化への寛容性を養うことができます。
言葉や肌の色・目の色、宗教や習慣、考え方の傾向に至るまで、世界にはさまざまな人が生活しています。
これからの社会では今よりさらに、日本という狭い範囲で物事をとらえるのではなく、広い視野をもち多文化や多様性を受け入れることが重要になります。
日常的に英語に触れ外国の文化に接することで、多文化理解を培うことができるのです。
認知力・理解力が高まり学力アップにつながる
イマージョン教育で得られるものは、英語力や多文化理解だけではなく、認知力や理解力の高まりも挙げられます。
このメリットについては、カミンズが提唱した「敷居理論」をもとに説明していきます。
カミンズの敷居理論
敷居理論は、3階建ての家に見立て説明されています。
それぞれの階の間には、敷居(天井)が存在。
早期バイリンガル教育(イマージョン含め)は、1階からスタートして上の階へと進みます。
3F 均衡バイリンガル(二言語とも言葉のレベルが高い) 例:私たちが考えるバイリンガル バイリンガル教育をすると、認知的にプラスの影響を与える |
第二の敷居 |
2F 偏重バイリンガル(片方の言葉レベルが高い) 例:通常の英語教育を受けた日本人 バイリンガル教育をすると、認知的にプラス・マイナスどちらの影響も与えない |
第一の敷居 |
1F 限定バイリンガル(両言語ともの言葉レベルが低い) 例:ダブルリミテッド バイリンガル教育をすると、認知的にマイナスの影響を与える |
上記のように、第2の敷居を超えた「均衡バイリンガル」の子供に、イマージョン教育をすると認知的にプラスの影響を与えるのです。
より高い認知力・理解力を身に付けることができれば、他の教科への学力アップにもつながります。
イマージョン教育の欠点
日常的に英語に浸すことで、英語を自然に身につけられるイマージョン教育。
海外でも、その効果は高く評価されています。
しかし、デメリットがあるのも事実です。
ここからは、3つの欠点について詳しく見ていきましょう。
ダブルリミテッドになる可能性も
イマージョン教育は、ダブルリミテッドになってしまう可能性があります。
ダブルリミテッドとは「2つ以上の言語を話せるけど、どちらも年齢に適した言語レベルに達していないこと」です。
英語だけでなく、日本語までも年相応レベル以下になってしまう可能性があるのです。
ダブルリミテッドとは?原因と対策をしって失敗しない英語教育を
とはいえ、イマージョン教育=ダブルリミテッドではありません。
イマージョン教育自体が問題なのではなく「取り組みかた」が重要なのです。
学費が高額であるケースが多い
学費は、通常の幼稚園・小中学校・高校よりも高額なケースが多いです。
イマージョンを取り入れている学校は、ほとんどが私立です。
なので、公立に比べると学費が高いのです。
またイマージョン教育には、独自の教材が使用されます。
教科書などを開発するコストや、英語が堪能で他の教科も教えることができる教師を採用するコストがかかります。
日本語の習得が遅れる瞬間があるかも
日本語の習得が遅れてしまう瞬間があることも、イマージョン教育の欠点といえます。
たとえば、完全イマージョンでは2・3年後まで読み書きを開始しません。
なので初期段階では、日本語の読み書きがイマージョンを受けていない人に比べて、遅れることもあります。
しかし、これは一時的なもの。
そして、受けるイマージョンの種類や学校によっても変わってきます。
結局、長期的にみれば同年齢の子どもと同程度か、それ以上の日本語力が身につきます。
イマージョン教育が受けられる学校
実際にイマージョン教育を実施している小学校は、13校。(※CLILを合わせると14校)
今回は、小学校だけでなく、中学校・高等学校も一緒に紹介します。
※CLILも英語で他の教科を学ぶ。他の教科学習と英語学習と統合させた授業。
学校一覧
暁星国際中学校・高等学校 インターナショナルコース(千葉県木更津市)
教員全員が英語圏の出身。中学・高校からのイマージョンでもしっかりサポート。
海外大学・日本有名大学への合格、英検1級合格を見据えた学力定着を目指す。
LCA国際小学校(神奈川県相模原市)
イマージョンだけでなく、自然や芸術とのふれあいにも力を入れている学校。
高学年ではスピーチやディスカッションに力を入れている。感じる・考える力を養い、個性を活かす教育が特徴。
加藤学園暁秀初等学校(静岡県沼津市)
日本初のイマージョン導入校。50%~60%を英語で学ぶプログラムを採用。
5年生では16日間のアメリカ旅行へ。学生間・生徒と教師・言語や文化など、壁のないオープンな教育が特徴。
リンデンホールスクール小学部・中高等学部(福岡県太宰府市)
楽しみながら自然に英語力を身に付けるイマージョン教育。感受性を育む自由な環境。
日本の文化にも触れ、母国のアイデンティティーを養う。個性を伸ばし、自信をつけて世界へ。
開智望小学校(茨城県つくばみらい市)
英語・音楽・図工を英語で学ぶ。(CLIL教育)1年生から週5 or 10時間(英語探求クラス)の英語学習。
上級生・下級生が一緒に行動する異学年学級を採用。思いやりなどのソーシャルスキルを育む。
公立小学校
イマージョンを導入している公立小学校は、2021年時点で2校。
学区外からでも通う児童もいるそう。
今後、全国で増えることに期待です。
インターナショナルスクール
インターナショナルスクールやプリスクールでの授業もイマージョンと呼ぶことができます。
インターナショナルスクールでの授業は、基本的にすべてが英語で行われます。
そのため「英語で他の教科を学習する」というイマージョンと同じような状況になります。
イマージョン教育の注意点
イマージョン教育には、注意点もあります。
つづいて、イマージョン教育を受けるうえで注意したい3つの点について見ていきましょう。
親のサポートが重要
先ほど、ダブルリミテッドになる可能性について説明しました。
言語力だけでなく、思考力や理解力にまで影響を及ぼしてしまうダブルリミテッド。
英語・日本語をバランスよく身につけ、均衡バイリンガルとしてイマージョンの恩恵を受けるためには、親のサポートも重要です。
敷居理論を唱えたカミンズは「第一言語(日本語)が発達しているほど、第二言語(英語)も発達しやすくなる」と提唱しています。
日本語が発達すれば、英語も発達しやすいということです。
イマージョン教育を受けながら日本語をより発達させるためには、家での家族との会話も大切になってきます。
親子での会話は日本語の発達だけでなく、家族の絆の形成や子どものストレス軽減にも良い影響が。
「バイリンガル教育のためのサポート」と意気込みすぎず、家で会話する時間を多くとることがおすすめです。
簡単にやめられない
イマージョン教育は英会話教室や塾とはちがい、簡単にやめることができません。
例えば、小学校1年からイマージョン教育を受け、親の転勤で小学校3年生から普通の小学校へ転校したとします。
他の子どもたちより英語が話せ、人気者になるかもしれません。
しかし、日本語の読み書きに関しては、他の子たちより遅れている可能性があります。
このように、イマージョン教育は長期的に継続して続けなければ、逆効果になってしまう可能性もあるのです。
インターナショナルスクール
すべての教科を英語で学習するインターナショナルスクールには、注意点もあります。
インターナショナルスクールは、もともとネイティブスピーカーのための学校です。
日本語の授業は、イマージョン教育導入校に比べるとはるかに少なく、日本語力が育たない可能性も充分にあります。
また、インターナショナルスクールの小学部→日本の中学校の入学は基本的にできないとされています。
これは、インターナショナルスクールでは、日本の卒業資格が得られないためです。
イマージョンじゃなくても本格的にバイリンガル教育をする方法
イマージョン教育を導入している学校は日本語を置き去りにせず、バランスよく二言語を習得できるような工夫がされています。
なので、ダブルリミテッドへの過度な心配は、必要ありません。
しかし、イマージョン教育を受けさせたくても、導入校が近くにない場合もあります。
そのような場合には、幼稚園・小学校など早い時期からの英会話教室がおすすめです。
おすすめのオンライン英会話教室
ベルリッツ子ども英会話は、4歳~新中学1年生までのオンライン英会話教室。
マンツーマンによるレッスン、質の高いオンラインを低料金で受講できるグループレッスンなどが選べます。
フォニックスを取り入れた学習で、よりネイティブな発音を習得。
「英語脳・英語耳・英語舌」が自然と身につく、オールイングリッシュのレッスンです。
また、読み書きの基礎も学べて、英検などの試験対策にも対応してくれます。
グローバルクラウンは、3歳から12歳までのオンライン英会話です。
バイリンガル講師によるレッスンで、楽しみながら英語を学ぶことができます。
マンツーマンレッスンは1回20分。集中して取り組めるように工夫がされています。
「聞く・話す・読む・書く」の4つを延ばすカリキュラムです。
また、32段階のレベル別カリキュラムで、達成感や挑戦する意欲を引き出します。
イマージョン教育まとめ
バイリンガル教育の一つとして注目を集めているイマージョン。
今回はメリットやデメリット、注意点とおすすめのオンライン英会話などを紹介しました。
グローバル化が進むなか、子供の英語教育は必須になってきます。
また、英語を学ばせるためには、早期英語教育がより高い効果を実感できることも事実です。
子どもの可能性を最大限に引き出し、世界を自分の舞台として活躍できる未来のために、バイリンガル教育をおすすめしたいと思います。
コメント